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厚生労働者「現代の名工表彰」受賞(弊社社員・久多良弘)
2011/11/15 受賞「現代の名工(卓越した技能者)」を、弊社岩手工場、久多良 弘が受賞
卓越した技能者表彰制度は、技能者の地位と技能水準の向上を図るために、金属加工、機械器具組立・修理、衣服の仕立、大工などの職業を分類した全20部門の技能者を対象に、厚生労働大臣より決定されるものです。
[受章者について]
氏名:久多良 弘 (くだら ひろし)
出身地:岩手県
職種名:金属手仕上げ工
昭和42年、株式会社東光舎のはさみ製造工として入社し、以降、理美容鋏の製造業務に従事。特に鋏の研ぎ調整の技能に関しては卓越した技能を持ち、高品質を維持しながらの生産増進に貢献するとともに後進の指導の育成に尽力しています。
(岩手県からは本年度は2名受賞しまたが、もうお一人は同県山田町の理容師 湊 正美さんです。震災でご自身経営の店舗が被災されましたが、岩手県理容生活衛生同業組合の理事長として復興へ向け奔走されています。)
[久多良 弘 の技(再掲)]
1.鋏の研ぎ及び最終調整の技
鋏は二枚の刃から成り立っているため、ナイフや包丁のように鋭利な刃先を付けることに加えて、隙間(刃先端の連なり=刃線の三次元形状が作る刃と刃との間隙)を精密に調整出来ない限り良い切れ味は実現できません。
まず、鋭利な刃先を作り上げるためには研磨による表面の加工時に発生するバリの除去が重要になります。刃先端の断面は約0.5μm(ミクロン=1000分の1ミリ)の半径の円の一部となりますが、不要なバリが残ることによって切れ味は損なわれます。このバリを表面、裏面から交互に研磨を繰り返すことにより微小化し最終的に完全に脱落させることが重要です。
次に隙間の調整は、刃先と触点とを結ぶ線に対する刃先端の軌跡をハンマや矯木(ためぎ)を用いて鋏体を変形させることで行ないます。この仕上がり精度は最大値で±10μm(ミクロン)以下で、これを超えると敏感なプロの理美容師のお客様からのクレームにつながるため特に細心の注意が必要になります。
久多良は、以上のような鋏の研ぎ及び最終調整の技能に精通しており、現在はお客様から寄せられる修理品の再研磨を行っています。修理品はロットで流れる製品(工程品)とは異なり一丁一丁がそれぞれの別個の状態にあります。修理品の再研磨には十分な知識と経験とが必要ですが、久多良は、月間1,000丁前後の修理品の再研磨を行ない、お客様の信頼を得ています。
2.鋏の手裏スキの技
研ぎ及び最終調整の前の工程として、裏スキ工程があります。裏スキ工程は直径200mm程度の砥石を使用して刃の裏面に刃線の三次元形状に沿った浅い溝を加工する工程で、鋏の切れ味を左右する重要な工程です。この加工は難易度が非常に高く、製品の製造工程においては機械化されています。
しかし、久多良の担当する修理部門においてはそれぞれ異なる状態の鋏が任せられるため、機械での対応は不可能で、久多良は、この裏スキ加工を安定した状態で手作業によって行うことが出来る日本でも数少ない技能者の一人です。
3.カーブシザーの加工方法の考案と安定化
カーブシザーは、刃が反り上がったような形状をしており、美容のカット技術におけるスライドカットやストロークカットに使用されるものです。鋏の切れ味を安定させるためには隙間を厳密に調整する必要がありますが、カーブシザーは鋏自体が反っているため、通常のように隙間を平面のゲージにて観察することが出来ないため製造の難易度が非常に高くなります。
久多良はこの作業に精通し、また独自のアイデアからカーブシザー用の隙間確認用ゲージを開発、カーブシザー加工方法の確立と品質の安定化に高く貢献しました。